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この大臣規範については、甘利明前経済再生担当相の“政治とカネ”問題を踏まえ、より厳しい改正が必要なのではないかという声があがっていた。だが、今年2月5日の衆院予算委員会で安倍首相は、「献金自体が不適切とは考えていない。民主主義の費用をどう国民が負担するかは、各党各会派で議論してもらうものだ」と発言。“民主主義の費用”とは詭弁も甚だしいが、挙げ句、「民主党も3年間政権を担っていたが、改正しなかった」などと言って居直ったのだ。
 そりゃそうだろう。大臣規範を厳しく改正してしまったら、安倍首相にとっておいしい集金装置である朝食会を開けなくなってしまうのだから。
 しかし、こんな面張牛皮な安倍首相にも、このように開き直りでは済まされない、政治資金にかんする問題がある。それは政治資金規正法で違反となる、虚偽記載の疑いだ。
 前述の資金管理団体「晋和会」は、小山好晴という「会社役員」の人物から11〜13年の3年間に各20万円、計60万円の献金を受け取ったことを記載している。だが、この小山氏は、じつはNHK制作局のチーフプロデューサーであり、『クローズアップ現代』や『プロフェッショナル 仕事の流儀』などの数々の人気番組を手掛けた人物で、「会社役員」などではなかったのだ。
 本来、NHK特殊法人であることから、局員は「NHK職員」あるいは「団体職員」と略されるのが通例であり、かつ小山氏は「役員」ではない。それを「会社役員」と記載していたことは、政治資金規正法違反の虚偽記載にあたるものだ。
 そもそも、NHKのチーフプロデューサーが政治献金を行うこと自体も問題視されるべきだが、さらにこの小山氏はタカ派論客で、安倍首相の熱狂的な支持者である金美齢の娘婿(長女の夫)にあたる。しかも、金氏本人も安倍に毎年100万円の献金を行っているが、金氏の長男・周士甫氏や小山氏夫妻の献金を合わせると、金ファミリーからの寄附は160万円にのぼる。個人献金の限度額は150万円であるため、これには“分散献金”の疑いもあるのだ。
 この問題は、「サンデー毎日」(毎日新聞出版)14年7月27日号が「政権と癒着する『みなさまのNHK』 敏腕NHKプロデューサーが安倍首相に『違法献金疑惑』」として掲載。その後、東京大学名誉教授であり、これまでもNHKの腐敗や不正を批判してきた「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の醍醐聰氏ら4人が8人の弁護士を代理人とし、晋和会の会計責任者を虚偽記載で、そして安倍首相を会計責任者選任と、監督責任を怠ったとして東京地検に刑事告発している。
 ところが、この問題はほとんど捜査もされないまま、昨年7月に不起訴処分が下された。結局、甘利前経産相の問題と同様、現在の東京地検は権力の顔色をうかがうことしかできないということだろう。
 つまり、“政治とカネ”の問題は、今回の舛添疑惑のようにマスコミがキャンペーンを張って社会の怒りを高める以外、政治家に辞任という引導は渡せない。だが、見ての通り、マスコミは弱い者いじめのごとく“政権から文句を言われない、叩いても安全”な政治家しか俎上に載せない。安倍首相にどんなにやましいカネの問題が発覚しても、マスコミは口をつぐんでしまうだけだ。
 大臣規範に背いた政治資金パーティでボロ儲けし、国民の税金が使われた政党助成金で派手に飲み食いし、政治資金規正法違反が疑われても捜査のメスは入らず、マスコミはダンマリ。──舛添氏が辞職しても、このように政治資金が疑惑ばかりの安倍首相が総理の座に居座る限り、その体質は何も変わることはないのだ。
(田部祥太)